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【イベントレポート】CAREFILオープンセミナー アートで拓く子ども・若者ケアラー支援 日韓の実践から

  • 58 分前
  • 読了時間: 6分

 2026年7月23日(木)に「CAREFILオープンセミナー アートで拓く子ども・若者ケアラー支援 日韓の実践から」を開催しました。

 会場(立命館大学朱雀キャンパス多目的室)とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で実施し、当日は42名(対面20名、オンライン22名)の方にご参加いただきました。

 私たちのプロジェクトでは、昨年8月に韓国を訪問し、アートを用いたケアラーの自己表現や支援について学びました(視察の詳細はこちら)。

 日本では、ヤングケアラー支援において相談体制の整備や早期発見の重要性が指摘されています。しかし、その前提には、自ら相談したりSOSを発信したりできる子ども・若者の存在があります。一方で、ケアラーが抱える葛藤や思いを言葉にすることは決して容易ではありません。自分の感情に気づき、それを表現する手段として、アートをはじめとする非言語的なアプローチにも大きな可能性があるのではないかと考えています。

 本セミナーでは、アートを通じた子ども・若者ケアラー支援について、日本と韓国それぞれの実践から学びました。また、当事者のエンパワメントという観点も踏まえながら、多様な子ども・若者の声を拾い上げるために必要な視点や具体的な支援のあり方について参加者とともに考えました。



【当日のご登壇者とお話の概要】

 当日は3名の方にご登壇いただき、カン・ネヨンさん(研究工房「人」先任研究委員/キョンヒ大学講師)に通訳を務めていただきました。以下、お話の概要です。


①チョ・ギヒョンさん(ケアコミュニティ「N人分」代表/アーティスト)

「ケアの経験が芸術になるとき」

 ご自身の父親のケアを15年前から続けるなかで、ケア経験をテーマに創作活動を行ってきた経緯を紹介しました。また、当事者の集まりから始まった「ケアコミュニティ N人分」の活動についても紹介し、「N人分」という名称には、ケアを一人で抱え込まない社会を目指す思いが込められていると語りました。

 自身の経験を書籍や映像作品、展示作品として表現する過程では、孤立した個人の経験だったケアが社会的な問いへと変化し、自身のケアに対する見方も変わっていったといいます。また、認知症の父親や病気のある家族と共同で作品を制作するなかで、「支える―支えられる」という一方向の関係ではなく、互いに影響し合う双方向のケアの存在に気づいたことや、作品を見た他のケアラーから自らの経験を記録したいという声を聴くようになったことが紹介されました。

 最後に、ケアラー支援には福祉サービスなどによる「ケア負担からの解放」だけでなく、文化芸術を通じてケアの意味や感じ方を捉え直す「文化的セーフティネット」も重要であると述べ、アートがケアラーの自己表現やエンパワメントにつながる可能性についてお話しいただきました。



②幸重忠孝さん(NPO法人こどもソーシャルワークセンター理事長/社会福祉士)

「10代ヤングケアラー合宿キャンプにおけるアート活動の実践報告」

 幸重さんからは、こども家庭庁の補助事業として昨年末に実施した「10代ヤングケアラー合宿キャンプ」の実践についてご報告いただきました。センターでは、日頃から子ども・若者の居場所づくりに取り組み、利用者の約7割がヤングケアラーですが、多くは自らを「ヤングケアラー」と認識していないといいます。そのため、2022年からヤングケアラー合宿キャンプのなかで当事者の声を丁寧に聴きながら、体験活動や配食支援などのプログラムを展開してきました。

 合宿キャンプでは、言葉で自分の経験を語ることが難しい子ども・若者も安心して参加できるよう、「アートによる自己表現」を中心に据えました。2泊3日のプログラムでは、ショート動画制作や楽曲制作、コラージュなどの作品づくり、ゲーム制作など、多様な表現方法が用意され、それぞれが自分に合った方法で思いを表現しました。

 キャンプ中に開催された活動報告会では参加者同士が互いの作品を鑑賞し、それぞれの表現を受け止め合う時間となりました。幸重さんは、アート作品はキャンプ終了後も参加者の手元に残り、日常生活の中で見返したり、歌を口ずさんだりすることで、その時の経験や安心感を思い出すことができる点も、アート活動ならではの大きな意義であると述べられました。



③狩谷美穂さん(MUSIC POWER for ALL. 代表/音楽療法士)

「日本のARTSセラピーの現状と可能性 こども・若者ケアラー支援をテーマに」

 狩谷さんからは、日本におけるARTSセラピーの現状と、ケアラー支援への応用可能性についてお話しいただきました。音楽療法士・表現ARTSセラピストとして医療・福祉・地域で実践を重ねてきた経験をもとに、セッションではご自身も参加者とともに表現活動を行い、「教える人」と「教わる人」ではなく、対等な立場で創作に取り組むことを大切にしていると紹介されました。

 日本にはアート、音楽、ダンス、ドラマなど複数のARTSセラピーがありますが、専門資格制度は十分に整備されておらず、実践の広がりには課題もあると説明されました。一方で、ARTSは年齢や障害の有無を問わず誰もが参加でき、家族や支援者も一緒に楽しめるコミュニティ性を持つことが大きな特徴であると述べられました。

 また、パーソンセンタードアプローチ(カール・ロジャーズ)やクリエイティブ・コネクション(ナタリ―・ロジャーズ)、グループ・ダイナミクスなどの理論を紹介しながら、ARTSセラピーは「安心して表現できる場」「評価されない場」「互いに認め合える場」を生み出し、ケアラーが自分自身を見つめ直す機会となり得ることを説明しました。その一方で、安全な場づくりや適切なファシリテーション、フィールドに詳しいスタッフとのコラボレーションが不可欠であることも強調されました。



 3名の話題提供の後、当事者参画において非言語が持つ可能性や日韓の取り組みの違いについて議論しました。



また、第二部では対面参加者限定で、N人分メンバーのオ・ヒョナさん、イム・ヘスクさん、キム・ヨンジョンさんをコーディネーターに迎え、第一部の内容を体感するためのアートワークショップを行いました。参加者同士がスカーフなどを用いて互いの関係性を探求し、ゴムバンドを使って関係の網(ボール)を作る共同作業をした後、身体に残ったケアの感覚をアートで表現しました。



【参加者の感想(一部抜粋)】

  • ケアの経験をアートにすることと、アートでケアをすることという2つの視点で語られる切り口が面白かったです。


  • 絵も歌も楽器も運動も評価される経験ばかりで苦手意識でいっぱいでした 今回のお話のような場があれば、安心して表現として楽しむことができるなと思いました 表現を通じて、誰かとつながれる、自分も知らない自分に気づく 言葉がなくても感じあえるのは良いなと思いました


  • 普段から相談場面で言語的なやりとりが十分な方への援助は得意としてきましたが、言語化に至らない思いや経験へのアプローチに難しさを感じてきました。アートを通じた援助に可能性を感じる一方で、活動に取り入れていくことのハードル(人材確保や資金面、プログラムとしての開発)が今後の課題になりそうだと感じました。


次回のセミナーは、9月13日(日)です。詳細こちらをご確認ください。


※N人分メンバーの来日期間中の研究交流についてはこちらをご覧ください。




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