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【イベントレポート】CAREFILオープンセミナー/YCARP 5周年記念イベント こどもまんなか社会の中でヤングケアラーの声はきちんと聞かれているのか ―当事者参画から考えるヤングケアラー支援の到達点―

1 時間前
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 2026年9月13日(日)に「CAREFILオープンセミナー YCARP 5周年記念イベント こどもまんなか社会の中でヤングケアラーの声はきちんと聞かれているのか ―当事者参画から考えるヤングケアラー支援の到達点―」を開催しました。会場(立命館大学朱雀キャンパス301)とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で実施し、当日は35名(対面12名、オンライン23名)の方にご参加いただきました。

 本イベントは、距離化・葛藤支援チームに参画する子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト(YCARP)の5周年を記念して開催したものです。YCARPは、当事者参画をベースにしたアクションリサーチとして5年前に発足しました。ヤングケアラー支援が法制化され、支援の仕組みが整えられつつある現在、あらためて「声を聴く側」のあり方を問い直すことを目的としました。

 ヤングケアラーは「かわいそうな子ども」として語られる一方で、当事者の声そのものが消費されたり、語ったことの責任を本人が負わされたりすることもあります。今回のセミナーでは、こうした当事者参画の難しさにも目を向けながら、「声を聴く」とはどういうことなのか、聴いた声をどのように支援や制度の変化につなげていくのかについて、当事者・研究者・行政それぞれの立場から考えました。

 また、韓国のヤングケアラー当事者団体「N人分」から5周年を祝うビデオメッセージも寄せられました。日本での法制化を評価するとともに、当事者が自分の人生の主体として声を上げ、社会を変えていく「参画」への到達を、今後も研究交流を通して共に目指していきたいとのメッセージが紹介されました。



【当日のご登壇者とお話の概要】

当日は3名の方にご登壇いただき、それぞれの経験や研究、実践から、ヤングケアラーの声が見えにくくなる背景や、当事者参画を進める上で大切な視点についてお話しいただきました。以下、お話の概要です。


① 風間暁さん(一般社団法人Void理事/認定NPO法人ASK理事/北里大学医療衛生学部非常勤教員)

「依存症家庭における「ケア」の多様性について――元非行少女の立場から」

 風間さんからは、依存症家庭における子どものケアの実態と、既存の支援制度では捉えきれない当事者の経験についてお話しいただきました。認定NPO法人ASKのヤングケアラー研究チームが実施した「依存症の親を持つ成人のヤングケアラー実態調査」では、お世話をしていた相手がいると回答した人が63.9%にのぼる一方、そのうち「自分はヤングケアラーに当てはまらない」と答える人も多く、ケアの実態と本人の自認との間にずれがあることが示されました。

 また、担っていたケアの内訳では「家族全体への情緒的ケア」が最も多いこと、具体的には、①顔色を読み親の爆発を防ぐ予防的ケア、②親の感情の受け皿になる受容的ケア、③仲裁し家族の空気を整える調整的ケア、④自分の感情や欲求を抑える自己犠牲的ケアという4つに類型化されることを紹介されました。依存症へのスティグマの強さや社会的理解の乏しさが、こうしたケアを見えにくくする要因になっているといいます。

 さらに、非行やリストカットなどの問題行動が表れると、その行動への対応が優先され、その背景にある傷つきやケアラーとしての経験に目が向かなくなるという支援における取りこぼしがあること、「ヤングケアラーです」と言えることを支援の入り口にしないことを指摘されました。「ちゃんと発言できる子ども」だけを政策参画に呼ぶのではなく、「問題行動」に注目されてしまい声を上げにくい子どもを含め、多様な声が反映される仕組みが必要であると述べられました。

 さいごに、現在運営する若者アフターケア相談センター「AWAI」では、「支援する・助ける」という関わりだけではなく、「一緒に困る・悩む」を基本姿勢としていること、風間さんは本人と専門職支援者との「あわい」の立場であることを紹介されました。支援する側は、子ども・若者と対等な関係で「話してもらえるに値する大人になれているか」を日々問い直す必要があると強調されました。


<参考資料>

厚生労働省,2025,第34回アルコール健康障害対策関係者会議 資料2-1『「依存症の親を持つ成人のヤングケアラー経験に関する実態調査」の中間報告と第3期基本計画への政策提案』.

風間暁,2026,『「回復」という毒――支援に埋め込まれた構造的暴力』日本評論社.




② 高岡里衣さん(元ヤングケアラー・当事者スピーカー)

「当事者活動7年目のわたしが、いま率直に思うこと」

 高岡さんからは、9歳から約24年間、難病の母親のケアを家族の中心として担ってきたご自身の経験と、当事者活動を始めてから現在までの歩みについてお話しいただきました。当事者活動を始めた背景には、過去の自分と同じような経験をしている人への還元、支援者への気づきの提供、そして自身の経験を言語化し、消化(昇華)していくことがあったといいます。

 現在までに経験談を話す機会は約200回にのぼり、NPO法人ふうせんの会、一般社団法人ケアラーワークス、一般社団法人日本ケアラー連盟などで活動されています。また、昨年11月には『子どもでいられなかったわたしたちへ ヤングケアラー「その後」を生きる』を刊行。ケアの真っただ中にいて外に出たり、人と話したりするエネルギーが残っていない人にも届くようにという思いや、講演などで切りとられた言葉でなく自分自身の言葉で経験を残したいという思いから執筆したことを紹介されました。

 高岡さんは、当事者として講演で発信することについて、たった一人分の経験であることの限界と価値の両方を感じているとおっしゃいました。過去の自分のような人や、ほんとうの想いのある人との出逢いに報われるという価値がある一方、自身の経験はあくまで一例であるにもかかわらず「ヤングケアラー全体の代表」として受け取られてしまうことや、経験を切り取られ、評価・消費されることへのしんどさ、専門家ではない素人扱いをされてしまうことなどについて率直に語られました。取材や研究協力においても、知らないうちに二次利用されたり、気軽に依頼されがちで協力後の成果が本人に十分返されなかったりするリスクがあると指摘されました。

 また、当事者活動への参画を考える際には「使う側・使われる側」の関係に置かないことが重要だと述べられました。ピアサポートについても、当事者が他の当事者の経験に対して「わかったつもり」で感情労働をするのではなく、専門職が責任を担い、ピアサポーター自身にもケアの機会や安全性を保障する必要があると強調されました。

 さいごに、当事者活動には大きな意味がある一方で、誰かの期待に応え続けることが自分の人生になってしまわないよう、当事者には自分の選択が自分の人生をつくるという姿勢を大切にしてほしいと呼びかけられました。


<参考資料>

高岡里衣,2025,『子どもでいられなかったわたしたちへ ヤングケアラー「その後」を生きる』子どもの未来社.




③ 滝島真優さん(明星大学 人文学部 福祉実践学科 准教授)

「ヤングケアラー支援から考える「こどもまんなか社会」―子どもの権利と家族支援の視点から―」

 滝島さんからは、「こどもまんなか社会」を子どもの権利の観点から捉え直し、ヤングケアラー支援において子どもの声を聴くこと、家族全体を支えることがなぜ重要なのかについてお話しいただきました。

 「こどもまんなか」は、単に子どもを優先するという標語ではなく、子どもを一人の権利の主体として尊重する社会のあり方であり、そこには子どもの最善の利益、意見表明・参画、ウェルビーイングという3つの要素があると説明されました。大人が考える「子どものため」と子ども本人の思いは必ずしも一致しないため、子どもの声を聴きながら、その子にとっての最善を考えることが必要だと述べられました。

 また、子どものケアが見えにくい背景には、家族の小規模化や地域とのつながりの希薄化、社会資源の不足、経済的困難、保護者の就労とケアの両立の難しさなど、複数の社会的要因が重なっていることを指摘。「ケアは家族が担うもの」という家族主義的な考え方によって、子どもが家族を支えることを当然のこととして内面化してしまうことにも触れられました。

 さらに、家族全体を一つのまとまりとして捉える「家族システム」の考え方や、イギリスで重視されているWhole Family Approachを紹介。子どもの状況だけを見るのではなく、家族全体のニーズを把握し、家族それぞれへの支援を組み合わせることで、子どもの過度・不適切なケア負担を軽減することが重要だと説明されました。

 子どもの声を支援や制度の変化につなげる取り組みとして、Laura Lundy氏が提唱した「Lundyモデル」も紹介されました。①安全な場があること、②子どもが自分に合った方法で声を表せること、③声を聴く責任のある大人・機関がいること、④そして聴かれた声が支援・活動・制度に影響を与えること。この4つがそろって初めて、意味のある当事者参画につながると述べられました。

 さいごに、子どもの声を聴く実践例も紹介されました。イギリスでは、学校のなかで子どもの声を拾い上げる仕組みやYoung Carers National Voice(YCNV)という全国的な当事者参画ネットワークがあります。学校の実践については、Sheffield市の学校における中学1年相当の全生徒を対象としたケアリング質問票、校内の担当職員(Safeguarding and Family Liaison Officer/Young Carers Lead)の配置、地域支援機関との連携、授業時間内のグループ活動などの取り組みを例に出されました。また、滝島さん自身が運営するきょうだい会「SHAMS」では、活動中の子どもの声をアンケートで受け止め、次回の活動や新聞に反映して本人に返すという、小さな循環を実践していることも紹介されました。



【こども家庭庁によるヤングケアラー支援プランのご説明】

 続いて、朝比奈卓さん(こども家庭庁 支援局 虐待防止対策課 企画官)より、2025年7月23日に決定された「ヤングケアラー支援プラン」の概要についてご説明いただきました。

 支援プランの策定にあたっては、実務者連絡会議を通じて、YCARPをはじめとする当事者団体・当事者経験者から意見を聴取。「18歳で支援が切れる問題」「家族全体を支える必要性」「ケアから離れられる選択肢の必要性」など、当事者から出された問題提起がプランに反映されていることが紹介されました。

 プランには、①若者世代への支援の推進、②家族・家庭まるごと支援、③多様なニーズに応える支援策の推進、④当事者参画につながる意見聴取の推進という4つの新たな観点が加えられています

 また、3名の話題提供を受け、家庭が必ずしも子どもにとって安心できる場所とは限らないこと、困り事を説明できることを支援のスタートラインにしてはいけないこと、当事者の声を尊重することが、判断の責任を委ねることになってはならないということ 、困難が顕在化する前から関係性をつくることの重要性などについてコメントされました。



【パネルディスカッション】

 後半のパネルディスカッションでは、風間さん、高岡さん、滝島さん、朝比奈さん、YCARP/CAREFILの斎藤が登壇し、「声を聴く」とはどういうことか、「当事者参画」は誰のためのものなのか、「声を聴いた後」に何を変えるのかという3点をテーマに議論しました。

 風間さんからは、声を拾い上げる側と声を上げる側の間にある権力勾配について指摘があり、当事者の声を拾い上げ、「その声をどうするか」を決める側に当事者がいないこと自体が問題であり、当事者が決定の場に入り、決定権を持つことが必要だと述べられました。また、当事者は支援を受ける側だけではなく、異なる専門性を持つ専門家として、支援者と対等なパートナーとしてチームアップできるとの提案がありました。

 高岡さんからは、子どもが声を出せるようになるまでには時間がかかり、信頼関係が積み重なった最後の段階で初めて話せることもあるとの経験が語られました。ヤングケアラーと自認するまでに1~2年かかる場合もあり、場があり続けること、子どもの生活圏内に場があることが重要だと述べられました。また、成績や内申、生活状況などに直接利害関係のない大人が、子どもの側に立ってアドボカシーできることの重要性も示されました。

 滝島さんからは、子どもが決定の場にいられない場合には周囲の大人が代弁する必要があるものの、まず子どもの権利に立ち返ることが前提であると述べられました。子どもが安心して話せる場があれば、子どもは自分なりの方法で伝えてくれること、そのためにも、子どもの声を聴くまなざしを向けられる大人を増やすことが大切だと強調されました。

 朝比奈さんからは、本当にわかろうとするためには「わかったつもり」になるのではなく、「わからない」にこだわり、わからない部分を本人に返して対話を深めることが重要だとの発言がありました。当事者の意見を聴くということを施策を考える上での材料集めとして行うのではなく、まずは、どうしてそうした声があるのか、あるいは声になっていないことも含めて「わかろう」とすることが大切なのではないかとの話がありました 。

 さいごに、行政の立場に立つ朝比奈さんから他の登壇者に対して、「声を聴く」ことについて具体的に何を変えられるのかという投げかけがあり、居場所やアドボカシーをキーワードに議論を深めました。居場所については、自転車で行ける距離や中学校区に一つ程度など、子どもの生活圏内に場があることの重要性が話されました。一方で、場があるだけでは十分ではなく、そこに子どもへ眼差しを向けられる大人がいることが不可欠であるとの意見も出されました。比較的年齢の近い人を配置したり、校内居場所を設けたりすることなど、子どもがアクセスしやすい形で支援を届ける可能性についても議論されました。

 さらに、少年院や児童自立支援施設など、声を上げにくい状況にある子どもへのアドボカシーについても議論が及びました。問題行動への対応だけでは根本にある傷つきは解消されないこと、聴いてもらえない経験を重ねることで、子ども自身が「言っても仕方がない」と発言することを諦めてしまう場合があることが指摘され、利害関係のない第三者やアドボケイトが本人の声を聴く仕組みの必要性が示されました。

 司会を務めた斎藤からは、大学に所属する立場として、当事者が登壇や研究協力などに参加する際の処遇のあり方について問題提起があり、専門家と当事者との間に生じている謝礼等の格差を見直し、当事者参画を実質的なものにしていくためのガイドラインを整備していく必要性が語られました。


【今回のセミナーを通して】

 今回のセミナーでは、ヤングケアラー支援において「声を聴く」ことそのものを目的とするのではなく、誰が、どのような関係性の中で、どのように声を受け止め、その声を支援や制度の変化につなげていくのかという、当事者参画のあり方について多角的に考える機会となりました。

 3名の話題提供からは、依存症家庭や家族のケアを担ってきた当事者の経験、子どもの権利と家族全体への支援という異なる視点が示されました。それぞれに共通していたのは、子どもの声を「聴いた」という事実だけで終わらせず、その声を受け止め、環境を変え、本人に返していくことの重要性です。

 また、当事者参画には、当事者が語ることによる負担や、経験の消費・搾取といったリスクもあります。だからこそ、当事者を「声を提供する人」としてのみ位置づけるのではなく、異なる専門性を持つ対等なパートナーとして、意思決定の場に参加できる仕組みをつくることが求められます。

 YCARPは5周年を迎えました。今回の議論を今後の活動につなげながら、子ども・若者の声が本当に支援や社会の変化につながるためには何が必要なのか、引き続き当事者の皆さんとともに考えていきます。


【参加者からの声(一部抜粋)】

  • 私の経験として、話しても誰も理解してくれないことに傷ついて話さなくなり、感情をなくしていき精神的におかしくなっていきました。おかしくなっていることも否定されました。公的機関の人たちだけでなく、一般の方々に理解してもらえるような教育課程(社会教育も含め)があればいいなと思ってきました。風間さんのように表現できないでただただ我慢をしてきただけ人たちも救われるようになってほしいです。参加できてよかったです。


  • 大変刺激と学びのある時間でした。風間さんの語りは当事者の強さと具体的な経験で迫力がありました。高岡さんの話は説得力があり、社会は当事者に、もっと頑張れと求めるが、この課題は社会がはたす役割であるとのメッセージでした。滝島さんのお話は、きょうだいの難しさを改めて感じます。きょうだいにとって、障害のある当事者は、生まれた時からの付き合い。当事者にとって親は支援を受ける自分と支援をする関係です。しかしきょうだいと当事者の関係は違う。いろいろ考える事がありました。


  • 子ども中心の支援を考えるにあたり、複数の立場からリアルな対話の機会を目の当たりにする貴重な機会でした。日々の生徒指導や教育相談の仕事を見つめ直すよい機会になりました。ありがとうございました。


【今後の予定】

 次回のオープンセミナーは、2026年12月12日(土)17時-19時、オンラインで開催予定です。イギリス在住の研究者・山下順子さん(英国ブリストル大学)を迎え、ダブルケアの視点から東アジアのケアラー支援について考えます。詳細は後日ご案内します。

 また、2026年10月31日(土)には、大阪公立大学女性学研究センター主催の「ヤングケアラーとジェンダー」がオンラインで開催され、CAREFIL・YCARPプロジェクト代表の斎藤真緒が登壇予定です(詳細・申し込みはこちら)


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